本日「静音性対策を講じたハイブリッド車等の体験会」が開催され,1月に発表された「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」に沿った車両接近通報装置を装着した試作車が自動車メーカ各社によって用意され,多くの一般参加者がその効果を体験しました。
トヨタのプリウス,三菱のi-MiEV,日産の試作EVの3車種による接近報知音のお披露目でした。今回の音が,そのまま製品として販売されるかどうかは分かりませんが,自動車メーカとしての,現時点での具体的なガイドラインへの対応案と受け止めています。
その音を聞いた僕の感想を,3つのポイントに分けてまとめます。
1)意外と小さい
ガイドラインでは「音量は一般エンジン車と同等」と記されており,ガイドライン添付の資料では,10km/hで56dB程度,20km/hで62~63dB程度(車両側方2m,地上高1.2mでの測定)と読めるグラフが示されており,これに準ずると考えるのが妥当でしょう。今回は簡易騒音計での測定ですが,「10km/h程度で走行」という条件では,側方2m程度の位置(写真のパイロンの位置)で3車種とも約55dBでした。
これが感覚的にどのくらいの音量かというと,写真後方に映っている高架を電車が通過すると聞こえないくらいの大きさです。対照条件として走行した,自動車教習所のアクセラの走行音の方が大きかったです。
体験会開催前に路面の小石を掃いて除いたり,舗装の継ぎ目を避けた走行コースを設定したりなどの準備がなされていました。いずれも,タイヤが小石や舗装の継ぎ目を踏んだ際に発生する音で,接近報知音が聴き取りにくくならないよう講じられた対策でしょう。これらのことからも「かなり小さめの」音量であることを想像してもらえると思います。
体験会に参加していた視覚障害者からは,「電車が通ると聞こえない。」「離れた場所では耳を澄ますと聞こえるという印象。」「(今回は静かな場所であったが,街中などの)他の音がいっぱいある場所でも聞こえるかどうかは分からない。」などの感想が聞こえてきました。
2)高域成分が多い音を使ってる。
3車種とも低域から広域までの周波数成分を含む音を創ってきたようです。プリウスは,音量や音高が周期変動するタイプで,今回の3種類の中では最も作り込んだ印象がある音でした。残りの2種は,比較的定常な音で,複数の周波数成分が聴き取れる音でした。最も目立つ成分は,いずれも3kHzから4kHz程度(?)のキーンという音です。(ちゃんと収録した音を周波数分析したわけではなく,自分の耳解析です。)
想像していたより高い音でした。高齢者など,高音域の感度が低下している人にも気づきやすい音なのか,検討の余地があるかも知れません。
3)指向性がある
意外だったのは,指向性があるということです。車との位置関係によって,音色や音量が異なって聞こえました。
体験会に参加していた視覚障害者からも「位置関係によって一瞬音が消える(=車が消える)ことがある」という指摘がありました。体験会終了後にプリウスを極低速で走らせてもらって,周囲を歩き回りながら音を聞いてみました。やはり,場所によって音色が変化し,車両の右後輪近くに来たときに最も小さく聞こえるようでした。
例えば車両前方によく聞こえる様にデザインするなどのように,指向性を意識した設計をしているのかとメーカの人に尋ねたのですが,むしろ無指向に全方位に聞かせたいと考えているそうです。ですので,場所によって音色や音量が異なって聞こえることは,意図したデザインではなく,「異なってしまっている」という状況のようです。短時間聞いただけで分かったことなので,おそらく,メーカでは把握済みで,対処を検討している段階だろうとは想像しますが。
このほか,体験会に参加していた視覚障害者からは,
「このキーンという音がいっぱい集まったらどうだろう。違和感があるかも知れない。」
「他の車の音がいっぱいあるときというのは,(車の)流れで分かるので困らない。路地や狭い所等の静かな場所で車に気づけるかどうかが大切である。この点では,今回提示された音は有効であると考えられる。」
などの感想がありました。
また,今回の対策音は,車両が停止してからどのタイミングで消音するのか,発進に際してどのタイミングで発音し始めるのか,この点がまだまだ荒削りなものでした。発音しはじめの立ち上がり/消音の際の減衰も,ブツっと消えたりしていて,デザインされていないものでした。立ち上がりのデザインは発進に際する注意喚起という意味において,もっと慎重に検討されるポイントでしょう。
今日(5月10日)の夜のニュースで取り上げられていたと思います(そのころはフライト中だったので見てません)。羽田空港からネット経由で自宅のHDDレコーダに予約を入れるつもりが,すっかり忘れてて,思い出したのは空の上...
明日には,各社のニュース記事も出ると思うので,twitterでリンクを紹介していきます。どのような論調で報道されるのか,注目したいと思います。