2010-10-22

一人でコンサートウィーク<第1日>: バイエルン放送交響楽団/ヘラクレスザール

バイエルン放送交響楽団のコンサートを聴きに,王宮(レジデンツ/
Residentz)内にあるヘラクレスザールへ行ってきました。レジデンツにある,と言っても,バイエルン州立歌劇場と並んでレジデンツ博物館の入口がある南側ではなく,Hofgartenに面した北側にホールの入口があります。地図はこちら




10月の午後7時なので真っ暗なのに入口側は街灯も少ないし,本当にここにコンサートホールがあるのかどうか不安になるような景色です。

中に入ると,石造りの重厚なホールロビーがあり,ちゃんと明かりが灯っていたので安心。入口を入って左手にクロークカウンターがずらっと並び,その奥の階段を上るとホールのフロアです。

ホール内部も,かなり歴史を感じさせる石造りのホールです。縦長のシューボックス型。装飾はプロテスタント教会程度の簡素なものだけ。古代ギリシャ風(ヘラクレス?)の大きなタペストリーが掛かっています。

今回聴いたのは,ステージ上手横の2階席だったので,全体の響きはよく分かんなかったけど,けっこう独特な響きな印象でした。ワンワン響くわけでもないんだけど,しっかり響いている感じ。シンプルさが独特という印象。また,ステージは間口が狭いのでオケが縦長になり,ティンパニや金管にとってはアンサンブルしにくそうなステージです。実際,大変そうだった。

バイエルン"放送"交響楽団ですので,公演はテレビやラジオで中継されることも多いようです。ステージ上の天井からマイクがずらりと吊られています。ティンパニ,コントラバス,ハープのマイクだけはスタンドでした。

さて,演奏ですが,前半のバルトークはまずまずの好演。だけど,後半のベートーベン(5番)が大変だった。1楽章で,なかなか足並みが揃わず,ばたばたした演奏が続いていたけど,ついに展開部ではティンパニは飛び出すわ,コーダに入るところでファゴットは飛び出すわの事故だらけ。この先どうなるの!?という不安な演奏。

なんか妙な空気を引きずったまま,2楽章,3楽章もテンポに一貫性がなく,落ち着かない演奏。

たぶん滅多にないダメ公演だったと思います。でも,そんな中でも木管の音色だったり弦の響きだったりを聴かせたり,テンションをなんとかリカバリーしていく,オケの底力を見れて面白かったですが。

まあ底力を見せるとは言っても,既に残された時間は少なく,取り戻せるものは少ない。曲は運命。どうする!? ...

やっぱり超速で無理矢理テンションを上げてました。4楽章の提示部の2回目は,1回目より二目盛りくらいテンポ上がってました。指揮者もオケもあおりまくって,どんどん速くなる〜

石造りの古いホールの壁と,超高速で無理矢理演奏をまとめようとしているオケを見て,頭をよぎったのは「Wiesnの暴走ジェットコースター」 オクトーバーフェストの会場(バイエルン訛りでWiesn)なんかで出てきてる,ギシギシ音を立ててる古ーいジェットコースターのよう。実際,ネジが何本か飛び出しちゃってるわけだし...


最終的には,粗いんだけど,スリル満点でエキサイティング!という感想でした。大事故をやらかしたティンパニストの名誉のために補足しておくと,バルトークではペダリングの嵐の超絶技巧な箇所もあるんですが,好演でしたよ。飛び出しポイントはなんかよく分からんけど,指揮者もコンマスも確実にコントロールできていた感じではなく,その前から崩壊気味ではありました。まああの飛び出しは致命傷だけど。

終演後,ティンパニ奏者はみんなと一緒にステージを降りず,寂しそうにゆっくりとバチを片付けて(下の写真),他の奏者が居なくなったのを見計らってとぼとぼ帰って行きました。その気持,よーくわかります...




左隣のおばちゃんとは,英語とドイツ語まぜまぜでちょこちょこと話ました。近所に住んでいて,バイエルン放送響はよく聴きに来るそうです。
おばちゃん曰く
「ここはいいホールでしょう?ミュンヘンにはもうひとつガスタイクってのがあるでしょ?あそこのはダメよ。ホールの響きに問題ありすぎ。席によっては全然ダメ!」
スポーツの応援と同じように,自分のサポートするオケっていう感覚があるんでしょうね。
また,この街で100年前,200年前からこのような音楽の文化を育ててる歴史がそこかしこにあるというのも,改めて感慨深く感じました。何というか,オーケストラがあって,コンサートがあるのが当然で,連綿と歴史を重ねているんだという感じかな。

明日は,ガスタイクへミュンヘンフィルを聴きに行きます。

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