2010-01-27

第1回 HV/EVが静かなことって悪いこと? 〜シリーズ:"静かすぎる"HV/EVに付加する音の研究〜

ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の走行音が静かであるために,歩行者が気づきにくいという問題が指摘され,接近報知音を設置することが議論されています。この問題について,私の研究スタンスに関して何回かに分けてこのblogでまとめていきます。

HVやEVは,従来のエンジン車と比べて,非常に低騒音であるという特徴があります。低騒音であるが故に,歩行者が気づきにくく危険であるという指摘があります。駐車場を考え事をしながら歩いていたら,「気づいたら後ろにプリウスが迫っていた!」という経験は私にもあります。(これまでに接触するような事故には出会ってませんが。)

このような事故を未然に防ぐために,「接近報知音(警告音)*1」を設置する事が議論されています。音がしないのなら,何らかの音を鳴らしてあげればいいのでは?という発想です。
*1 名称についてはこちらのエントリーを参照ください


一方,自動車騒音という観点からこのHV/EVの低騒音性をみてみましょう。

これまで,環境問題意識の高まりから,騒音対策の一環として騒音規制法によって自動車騒音が規制され,自動車の低騒音技術に伴って順次強化されてきました。現在の乗用車は相当静かです。道路に出ると「ブーン」という音を立てて車が走っているイメージがあると思いますが,発進時に目立った音を立てているのはバス,トラック,軽自動車がほとんどです。今度,試しにちょっと気にして聴いてみてください。さまざまな低騒音技術によって,車はとても静かになっています。そこに登場したのが,もっと静かなHV/EVなのです。

このような騒音政策の流れを考えると,HV/EVのような低騒音車の出現は望ましいことなのです。静かなことは大歓迎なのです。そこにわざわざ音を付加しようという議論なのですから,否定的,拒否的意見が出てきても当然でしょう。blogの記述やtwitterでの反響(*2)などを通して社会の反応を観察しても,「なぜ静かな車から音を出してわざわざ騒音を作るのか」「めいめいの音楽を流す車が何台も来たらどうなるの?」などなどの指摘が多く見られます。
*2「ゴッドファーザーのテーマでいいじゃん」というような皮肉も. . .

一方で,あまりに静かであれば歩行に支障をきたす人々がいるのも事実です。また,純粋に「音で解決できるのなら,それを期待」という人も多いようです。次回は,このような問題について考えてみます。

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私たちの研究グループでは,接近報知音のデザインについての音響学的検討を実施中です。ご意見ご感想をお待ちしています。

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