2010-08-27

ミュンヘン工科大付近の景色

ミュンヘンに来て2週間が経ちました。2週間の間にIKEAに2回も行って,安ーい雑貨を買い揃え(高いものを買っちゃうと帰国時の荷物が増えちゃうから),ずいぶんと生活環境も整ってきました。でも,そうこうしているうちに,もう夏が終わってしまいそうな雰囲気です。

今日は大学付近の景色をご紹介します。


ミュンヘン工科大学(Technische Universität München / TUM)はミュンヘン中心部から北西にあたるMaxvorstadtというエリアにあります。

近隣には,ミュンヘン音楽演劇大学(Hochschule für Musik und Theater München)やミュンヘン大学(Ludwig Maximilians Universität / LMU)などがあり,有名な美術館であるアルテピナコテーク(Alte Pinakothek)・ノイエピナコテーク(Neue Pinakothek)などがある,いわゆる文教地区です。


これはArcisstraßeに面したTUMのメインエントランスです。でも,僕の居る研究室は東西に走るTheresienstraße(テレジエン通り)を挟んだ北側のブロックにありますので,こちらのメインブロックのエントランスはめったに使いませんが。

研究室を出て,メインブロックと北ブロックを隔てるTheresienstraße沿いに東に向かうと,隣のブロックがノイエピナコテークです。ピナコテークとは元々「絵画貯蔵庫」を意味する言葉で,バイエルンを治めたヴィッテルバッハ家の収集した絵画を所蔵した美術館です。18世紀後半以降の近代作品を所蔵するノイエ(=新しい)ピナコテークと,それ以前の作品を所蔵するアルテ(=古い)ピナコテークがあります。




ノイエピナコテークの敷地内には,この写真のようなTheresienstraße沿いの遊歩道が整備されています。ベンチやカフェもあり,ここでのんびりと時間を過ごす人もたくさんいます。

この遊歩道を抜けると,Barerstraße(バラー通り)に出ます。このBarerstraßeにはトラム27番が走り,中心部のカールスプラッツ(Kerls Plats)やゼントリンガー門(Sentringer Tor)方面へ10分程度で出ることができます。
遊歩道を抜けたところがトラム27番のPinakothekenという駅になっていて,5〜10分ごとにトラムがやってきます。

2010-08-24

住民登録と居住許可申請

ミュンヘン生活がスタートしましたが,観光旅行ではなく,しばらく滞在するには役所に届け出る必要があります。必要なのは,住民登録(Anmeldung)と居住許可(Aufenthaltserlaubnis)。

この手続きに関する情報は,ほとんどの人にとってはどうでもいい話なんだけど,同じような状況を迎えた人にとっては,案外助けになるものです。英語圏の国への留学情報は豊富にあるのですが,ドイツへ研究者として滞在という情報はあまり見かけません。(たぶん該当者は少なくないだろうけど。)いつかどこかで誰かの助けになるかも,ということで書いておきます。2010年8月での情報です。


まず,月曜日にミュンヘン工科大(TUM)のInternational Officeで,必要書類の作成を補助してもらいながら定形フォームに必要事項を記入。うちの場合は僕と妻と娘の3人なので,3部の書類記入が必要です。意外な項目は両親の氏名,生年月日,生誕地の記入。International Officeの人も「両親の情報が求められるのはちょっと変だよね」とは言ってました。妻の両親の生年月日まで憶えていないので,これは家に帰ってから記入。うちの場合は妻が以前4年間フランクフルトに住んでいたので,ちょっぴり込み入ったところはありましたが,難しいことは特にありませんでした。

ドイツ語と英語が併記されたフォームなので,「どのようなこと」を記入する欄かはすぐに分かるのですが,「どこまで細かい情報を」記入すればいいのかは判断が難しい。その点はプロがサポートしてくれたので非常に安心でスムーズでした。

木曜日に申請に行くことにしていたのですが,International Officeで申請手続きの電話予約もいれてくれました。電話予約まで入れてもらえるのは,子供連れだからという特例なのかも知れません。

余談ですが,ヨーロッパでは子連れだと優先されることは多いです。空港でのチェックインやセキュリティチェック,ちょっと変わったところではルーブル美術館の入場待ち行列なんかも,係員からちょいちょいと呼ばれて別ゲートからさらっと入れてもらえました。我が家ではマキチャンパワーと呼んでいます。


そして木曜日に,これらの申請にU3のPoccistrasse近くの役所(Kreisverwaltungsreferates: KVR)に行ってきました。

まずは地階で住民登録。住民登録に必要なのは定形のフォームにドイツ国内の住所や日本の住所を記入した書類のみ。これもTUMのInternational Officeで作成してもらったので,簡単でした。自分で書くとなると,これはドイツ語だけだったのでちょっと苦労すると思います。担当係員に呼ばれたら(ここもマキチャンパワーで順番待ち時間は短かった),英語で簡単な質問のやり取りをして,住民登録証にハンコとサインが入ったものを受け取ります。

住民登録が終わったら,登録証を持って1階で居住許可申請へ。通常はcontact counterに申し出て順番待ちをするのだと思いますが,電話予約のおかげで直接係官の部屋へ。
住民登録証の他に必要なものは以下の通りでした。
・パスポート
・滞在資金の証明(僕の場合は,長崎大学からの英語での派遣予算証明)
・ドイツ国内で有効な健康保険の証明
・賃貸契約書のコピー
・所定サイズの証明写真(写真屋さんで頼めばすぐにできました)
また,夫婦で申請するなら婚姻の証明,子供も申請するなら誕生の証明が必要です。戸籍謄本のドイツ語翻訳がその証明になります。日本出発前に認証翻訳の手続きを取る必要があります。(ドイツ大使館や領事館のwebサイトに説明があります。)
あと,僕の場合はGuest researcherとしての滞在ですので,それを証明するinvitation letterが必要でした。こっちのボスが,僕と入れ替わりでシドニーに行っちゃってるのでどうしようかと思ったけど,これはその旨が記されたe-mailのコピーでOKでした。

必要書類を渡して,近くの待合室で待つこと15分ほど。夫婦で同じ物件に同居しています,というdeclarationの記入を追加で求められ,住所と名前を記入してそれぞれのサインをする。さらに10分くらい待って,「あとはこれを持って支払いカウンターに行ってね」とパスポートと確認書類を手渡される。(申請書類一式も返却されました。)あとは,支払いカウンターで大人500ユーロ(子供250ユーロ)の手数料を支払って10分くらい待つと,居住許可証が貼付けられたパスポートを受け取っておしまいです。

このあと,役所地階のカフェでアイスクリームを買って食べながら帰りました。

2010-08-23

ミュンヘン生活スタート

ミュンヘンに到着して,あっという間に10日が過ぎました。

最初の1週間は両親も一緒に来ていたので,娘の子守りを頼んで家の掃除や買い物をしたり,今回が初めての海外旅行である両親と観光を楽しんだりしてました。1泊はちょっと足を伸ばして(電車で2時間ほど),ザルツブルクへ行き音楽祭で賑わった市内を観光してきました。
団塊世代に人気のありそうなヨーロッパ周遊ツアーではなかったけど,ローカルなスーパーマーケットや雑貨屋で買い物をしたり,IKEAは世界中どこでも同じだと体感したりと,一風変わった海外旅行を楽しんでもらえたと思います。


もちろんこの間にもいろいろ問題やら懸案事項はありました。
最初の大騒動は,到着後の賃貸物件の鍵の受け取りでした。

今回は成田からのルフトハンザの直行便で,ミュンヘン到着が金曜日の17時半ごろ。
当初は大家さんかその娘さんが物件と鍵の引き渡しをしてくれるという交渉だったのですが,直前になり,どちらも来れないとのこと。仲介の不動産業者に頼んでも「特別に7時までなら待つけど,もし遅れたら責任は持たない(つまり月曜日の営業開始まで家に入れない)」と言われる始末。(ヨーロッパの勤務時間外の仕事に対する態度としては,これが標準的だとは思います。)
週明けまでのホテル暮らしも覚悟したのですが,今回は,同じ研究室に4月から熊本高専の先生が滞在していて,6月にお会いしたこともあるので,無理をお願いして難を逃れることができました。感謝感謝です。
前もって物件の引き渡し手続きをしてもらい,空港到着後に電話で連絡して中央駅で鍵を受け取りました。小雨がぱらつく天気でしたが,その後中央駅からタクシーに乗って,無事に家に到着しました。

ちなみに,ミュンヘンは空港から市内へ移動するなら,S-bahnを使うのが安くて早くて快適です。ですが,今回は荷物が多い(大人4人でトランク5個と3歳児を運搬!)ので,空港から中央駅行きのルフトハンザバスを利用しました。電車より高くつくけど,空港の荷物カートでバス停まで行ってトランクに放り込むだけなので,荷物が多いときにはいいかも。


もうひとつの大イベントは居住許可の申請だったのですが,これはまた改めて。Tschüss!

2010-08-12

いよいよ明日出発です。

随分前に「ドイツ渡航の準備を書いていきます」と書いたっきりで,結局出発前日となってしまいました。明日,成田経由でミュンヘンに行き,年明けまでミュンヘン工科大にて在外研修をします。

ドイツに到着後,居住登録とビザの申請をするために必要な書類を準備することが,ここ数週間の最大の課題でした。

主なものは
・大学からの給与および滞在経費支払い証明
・戸籍謄本のドイツ語翻訳(家族も共に滞在する場合に必要)
・ドイツ国内で有効な健康保険
・賃貸住宅の契約書
などです。

今回の僕の場合には,ミュンヘン工科大(TUM)のInternational Officeが丁寧にいろいろと教えてくれるという環境でしたので,ここにメールで相談しながらの準備でした。(家探しは,International Officeを通さず,妻がドイツ語で不動産屋と交渉してましたが)

それぞれの準備も済み,漸く,明日朝の出発を待つばかりとなりました。
(ここに至るまでに,ブログに書ききれないくらいの紆余曲折はあったのですが...)


明日朝は福岡空港から成田へのフライトから始まりますので,研究室のメンバーや,同僚から暖かく送り出されて,福岡の実家に来ています。現地に到着すれば,またいろいろな問題が出てくるとは思いますが,それも勉強と思って,気楽に前向きにドイツ生活を楽しんで来ようと思ってます。

では,いってきます。

2010-08-05

[研究紹介] 低騒音自動車の接近報知音デザインに関する多角的研究

毎日暑いですが,個人的にはあと1週間ほどで夏が終わります。

というのも,日本時間14日未明には,すでに最高気温が20℃そこそこのミュンヘンに到着している予定だからです。そのまま1月まで,ミュンヘン工科大で在外研究を行います。

さて今日は,渡独を前に,改めて現在取り組んでいる研究テーマの紹介をします。研究の背景と,僕がどこを目指しているのか。もちろんミュンヘンで実施する研究も,このテーマの研究です。

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近年,電気自動車(EV)のような非常に静かな車が急速に普及しつつあります。これらの車の静かさは,長年の道路交通騒音対策の観点からは歓迎されるべきことです。自動車騒音を低減し,静かな都市環境を創造することは,長年の自動車関連業界の使命だったのですから。

一方で,ご存知の様に,静かすぎるために歩行者が車の接近に気づきにくいという危険性が指摘され,音によって車両の接近を知らせるシステムが検討されています。しかし,安易な音の付加によって新たな騒音問題を引き起こすことがないように,慎重な議論が必要であることは言うまでもありません。

ところが,「音によって車の接近を知らせるためには,どのような音(音響特性)が必要なのか?」という問いに,十分に答えられる知見は未だ存在しないのが実情です。例えば,最も基礎的な特性である音量についても,定量的な知見がないのです。

にも関わらず,早急な法制化が進められていることは大問題です!

「音が静かで困るなら,音をならせばいい」「これまでの車と同程度の音がしないから,それと同じような音を出せばいい」などという安易な発想でなく,さまざまな視点に基づいた議論が求められるはずなのです。

従来のガソリンエンジン車を想定した音色や音量が,車のサウンドデザインとしてベストなのでしょうか?また,音が必要な場面,音が有効な場面は「いつでも」ではないはずです。その音はどのようにデザインされ,どのような形で利用されるべきでしょうか?


私は,接近報知音の是非やそのあり方について,
・デザイン要求事項に関する基礎検討
・必要な技術開発
・様々な観点からの評価や調査 
などの多角的な研究を展開し,現実的に利用可能なシステムや規格を提案することを目指しています。また,この研究は,低騒音自動車の発展・普及という非常にグローバルな問題に関連していますので,ミュンヘン工科大との共同研究をはじめとした国際的な研究展開を行っていきます。



静音性と安全性を両立するデザインは可能なのか?
音を付加することが唯一の解決策なのであろうか?
こういう議論を社会に提起していきたい。

繰り返しますが「これまでの車と同程度の音がしないから,それと同じような音を出せばいい」というのは,あまりに拙い対策です。来るべきEV時代における車のサウンドデザインを,または車を取り巻く環境や社会を,根本的に考え直すタイミングではないでしょうか。

EVが静かであるならば,それ故に気づきにくくて危険であるならば,今こそより静かで,歩行者に優しい社会に変えていくチャンスでもあるはずです。