毎日暑いですが,個人的にはあと1週間ほどで夏が終わります。
というのも,日本時間14日未明には,すでに最高気温が20℃そこそこのミュンヘンに到着している予定だからです。そのまま1月まで,ミュンヘン工科大で在外研究を行います。
さて今日は,渡独を前に,改めて現在取り組んでいる研究テーマの紹介をします。研究の背景と,僕がどこを目指しているのか。もちろんミュンヘンで実施する研究も,このテーマの研究です。
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近年,電気自動車(EV)のような非常に静かな車が急速に普及しつつあります。これらの車の静かさは,長年の道路交通騒音対策の観点からは歓迎されるべきことです。自動車騒音を低減し,静かな都市環境を創造することは,長年の自動車関連業界の使命だったのですから。
一方で,ご存知の様に,静かすぎるために歩行者が車の接近に気づきにくいという危険性が指摘され,音によって車両の接近を知らせるシステムが検討されています。しかし,安易な音の付加によって新たな騒音問題を引き起こすことがないように,慎重な議論が必要であることは言うまでもありません。
ところが,「音によって車の接近を知らせるためには,どのような音(音響特性)が必要なのか?」という問いに,十分に答えられる知見は未だ存在しないのが実情です。例えば,最も基礎的な特性である音量についても,定量的な知見がないのです。
にも関わらず,早急な法制化が進められていることは大問題です!
「音が静かで困るなら,音をならせばいい」「これまでの車と同程度の音がしないから,それと同じような音を出せばいい」などという安易な発想でなく,さまざまな視点に基づいた議論が求められるはずなのです。
従来のガソリンエンジン車を想定した音色や音量が,車のサウンドデザインとしてベストなのでしょうか?また,音が必要な場面,音が有効な場面は「いつでも」ではないはずです。その音はどのようにデザインされ,どのような形で利用されるべきでしょうか?
私は,接近報知音の是非やそのあり方について,
・デザイン要求事項に関する基礎検討
・必要な技術開発
・様々な観点からの評価や調査
などの多角的な研究を展開し,現実的に利用可能なシステムや規格を提案することを目指しています。また,この研究は,低騒音自動車の発展・普及という非常にグローバルな問題に関連していますので,ミュンヘン工科大との共同研究をはじめとした国際的な研究展開を行っていきます。
静音性と安全性を両立するデザインは可能なのか?
音を付加することが唯一の解決策なのであろうか?
こういう議論を社会に提起していきたい。
繰り返しますが「これまでの車と同程度の音がしないから,それと同じような音を出せばいい」というのは,あまりに拙い対策です。来るべきEV時代における車のサウンドデザインを,または車を取り巻く環境や社会を,根本的に考え直すタイミングではないでしょうか。
EVが静かであるならば,それ故に気づきにくくて危険であるならば,今こそより静かで,歩行者に優しい社会に変えていくチャンスでもあるはずです。
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