2010-11-30

ミュンヘン雪景色

先週末からの雪で,ミュンヘン市内は一面の雪景色になりました。
このまま根雪になるのか一度解けるのかは分かりませんが,とりあえず今週はずーっと最高気温も氷点下のようですのでしばらくこの景色が続くようです。

8月に紹介した写真と並べて,ミュンヘンの雪景色を。







2010-10-26

一人でコンサートウィーク<第5日>: ゲルトナープラッツ州立歌劇場/魔笛

一人でコンサートウィーク,いよいよ最終日です。今日は,ゲルトナープラッツ州立歌劇場(Staatsoper am Gärtnerplatz)に,モーツァルト<魔笛>を聴きに行きました。

これまでのミュンヘン3大オケよりはずっと規模が小さな劇場&オケです。場所は,マリエンプラッツ(市庁舎前)からヴィクトーリエンマルクトを抜けて,さらに南へ200mくらい行ったところのゲルトナープラッツという広いロータリーの広場の南側にあります。地図はこちら。中央のロータリーがゲルトナープラッツで,これを時計に見立てて6時から7時の位置にある建物が劇場です。


実は,ここのオケのコンサートマスターと2ndオーボエに友達がいるのですが,今日は二人とも降り番だったみたいです。

今日は,昨日の全くと言っていい程ステージが見えなかった€10の席より安い,なんと€6の座席。さてさて? 全部で4層あるバルコニー席の最上段,昨日と同じ日本式に言う5階席。ちょうど右の写真の最上段左から2番目の席でした。5階なんだけど,最前列ですのでステージは7割方見えます。上手端とステージ奥は間口の影になってしまいます。でもでも,舞台上の演出はほとんど分かるし,今日は舞台を楽しんだ!という気分に浸れました。

ホールが小ぶりな分,バイエルン州立歌劇場よりさらにデッドな響きです。オーケストラピットの床やステージで多少の反射はあるものの,ほとんど直接音を聴いている感じです。でも,あまり粗く聴こえないのはオケと歌手の腕でしょうね。

今日は,子供向け(?)公開の日で,3歳くらいの小さな子供や小学生〜中学生くらいの子供がたくさん来ていました。とは言え,それだけではなく,一般の人も多かったです。小学生グループは,カーテンコールの時に3人の童子(ボーイソプラノ)が出てきたときにはキャーキャー大はしゃぎでした。もしかして同級生!?

今日のお隣は無人でした。左側は4つ座席が空いていたので,2つ内側に詰めてちょこっと中央寄りで見ました。という訳で,今日は最終日にしてついに全く会話無しのコンサートでした。

ちなみに,写真は先月行われたオープンハウスの時のものです。オープンハウスでは,ステージのみならず大道具準備室や衣装室などまで公開されて,子供たちが衣装を着てみたり,役者さんと写真を撮ったり,風船をもらったりと,とても楽しいイベントでした。比較的小さい劇場なので,観客との距離も近く,親しみやすい雰囲気の劇場です。今日も子供向けの公開をしていたように,ここのような劇場がドイツの音楽文化の根っこを育てているんでしょうね。そんなオケのコンサートマスターが日本人というのは,日本人としてとても嬉しく誇りに思います。

世界に名だたるオケや歌劇場だけでなく,もし機会があれば,こんな劇場も訪れてみてはいかがですか?

2010-10-25

一人でコンサートウィーク<第4日>: バイエルン州立歌劇場/ラ・トラヴィアータ

一人でコンサートウィークはまだ続きます。今日はバイエルン州立歌劇場(Bayeriche Staatsoper)です。木曜日に訪れたヘラクレスザールがあるレジデンツのすぐ隣です。地図はこちら。(中央の薄緑色の屋根の建物が劇場)
トラム19番のNationaltheaterで降りれば目の前ですし,マリエンプラッツ(市庁舎前)からも歩いてすぐの街のど真ん中です。


木曜日金曜日に訪れたシンフォニーコンサートホールとは違う,ゴージャスな雰囲気。来ている人のオシャレ度もより高く,平均年齢もより高い感じです。(昨日ほどではないですが。)

本日のプログラムはG.ヴェルディ:<ラ・トラヴィアータ>です。日本語では一般に「椿姫」。指揮はカルロ・モンタナーロ。

前日になってチケットセンターで購入したので,€10の立ち見席しか残っていませんでした。全部で5層あるバルコニー席の上から2番目,日本式にいう1階席から数えて5階に相当する場所でした。その上手側の横っちょで,3列目。1,2列目とは段差がついているのですが,ステージを見下ろすには角度が足りない。どんなに頑張ってもステージの下手側1/3くらいしか見えません。しかもステージ奥の方は全く見えない。

写真は休憩中や終幕後に人がいなくなった中央方面へ移動して撮ったものなので,座席からはもっともっと見えないです。終幕後に中央方面に移動して,漸くこんな顔の歌い手だったのかと知ったくらい。じゃあ,オケは見えたのかというと,オケも1stヴァイオリンの第2プルートと木管ホルンが見えるのみ。むぅぅ。まあ,€10じゃこんなもんかな。

今日のお隣は日本の方でした。ゾーリンゲン在住のピアノ調律師だそうです。お互い「見えないねえ」と言いながら背伸びして,前の人の隙間からステージを覗いていました。勉強と趣味を兼ねて,各地のホールや劇場を訪ねているそうです。職業は違えど,僕と同じですね。

というわけで,音響的な話題を何か記録しなければ。

ひとつだけ挙げると,第一幕で何曲か録音伴奏の曲がありました。あれは何かの演出だったのかなぁ?でも,これもステージ上の様子が分からないのでなんとも...

というわけで,今日はあまり書く事がありませんので,この辺で。

2010-10-24

一人でコンサートウィーク<第3日>: Boarischer Hoagartn

演奏会三昧第3日は,こちらのボスに誘われているバイエルン民族音楽。「コンサートではなく,集まりだ」と説明されているのですが,どういったものなんやら?という感じでほとんど前知識無しで出かけました。

途中の地下鉄駅で待ち合わせて,車で拾ってもらって会場へ。奥様に初めてお会いしました。すでにリタイアされているけど,高校でドイツ語とフランス語を教えていたそうで,とても綺麗な英語も喋る方です。

会場は,ミュンヘン市南西部のSendling地区にある,聖トーマス・モールス教会(St. Thomas Morus)の集会場。どうやら,教会所属の地区の人たちが集まり,音楽や食事を楽しむというイベントのようです。(たぶん,ね。)

毎月のようにいろいろな会場で行うそうなのですが,オリジナルには秋に行うものだそうです。

ちなみにタイトルの"Boarischer"というのは,「バイエルンの(Bayerische)」のバイエルン訛り。 "Hoagartn"というのもバイエルン訛りだそうです。標準ドイツ語なら"gartn"が"garten"となるところですが,訛っています。

集まったのは総勢200人はいるかという感じ。その中で,こちらのボスを含む10名くらいが楽団として参加していて,演奏をします。演奏は,ツィター(Zither),ギター,ハックブレット(Hackbrett/写真),コントラバス,ハープ,アコーディオンなどによる演奏と歌。特に,ツィターやハックブレットは,バイエルンやチロルなどのアルプス地方独特の楽器。演奏される音楽もバイエルンの音楽だそうです。

とりあえず料理を食べて,それから演奏などなどが始まります。上記の楽器のソロやアンサンブルと歌,それから民話やポエム(?)の朗読が交互に披露されます。朗読は,当然全く分かりません。でも,おもしろ系のお話のようでみんな笑ってます。落語のように声色を変えたり,スピードを変えながらなので,ある種の音楽のように楽しみました。

あまり外国人が参加することはないイベントのようで,司会のおじさんが,わざわざ僕のことを紹介してくれました。ところが「今日の演奏を聴くためにわざわざ日本から来た」というような感じで紹介したようで,すごい喝采を受けました。ボスの入れ知恵か!?

さて,そのボスはコントラバスとハックブレットを演奏してました。今まで知らなかったのですが,学生時代は工学部と音楽学部を掛け持ちしていて,コントラバス奏者の道も考えていたらしい。州立歌劇場でプロの奏者たちが音楽の話をせずにサッカーの話ばっかりするのに幻滅して,研究者になったんだって。まあ,この辺のエピソードは話半分かもしれないけど。でも実際,著書のプロフィールを確認したら'69年にミュンヘン音楽大学(Hochschule für Musik und Theater München)を卒業して,'70年にミュンヘン工科大(TUM)を卒業とのこと。ちなみに専攻はコントラバスだったそうです。音響学は音楽と切っても切れない関係にあるので,音楽の素養がある研究者がとても多いですが,音大を演奏専攻で卒業してる研究者は少ないぞ!

バイエルン州立歌劇場でコントラバスを弾くか,ミュンヘン工科大でアカデミアに入るかという選択だったわけですよね。凄い!どっちもドイツ国内で指折りの,世界に名を馳せる団体ですよ。僕の場合は,研究職が見つからず困り果て,かといって打楽器でも食っていけないし,というポスドク生活だった。ベクトルの方向性はちょっと似てるんだけど,スケールが全然違うなぁ....

2010-10-23

一人でコンサートウィーク<第2日>: ミュンヘンフィルハーモニー/ガスタイク

今日は,ミュンヘンフィルハーモニーのコンサートを聴きに,ガスタイクへ行ってきました。ガスタイクとは,図書館や市民大学施設などからなる複合文化施設の総称でもあり,正確にはガスタイクのフィルハーモニーというホールに行ってきました。地図はこちら。(中心の水色の屋根の不整形な建物がホール部分)

本日のプログラムは,シュレーカーの「夜曲」,マーラーの「リュッケルト詩による5つの歌曲集」,ブラームスの交響曲第4番。指揮はもちろん,クリスティアン・ティーレマン。ソプラノはルネ・フレミング。

ガスタイクは一度入口までは来た事があるので場所に不安はありません。しかも,昨日のヘラクレスザールと違って,付近も明るいので安心です。入口を入ってからも広くて明るい。昨日の不安は全くありません。

ホールは,壁面は主に木材で構成されたワインヤード型の大型ホールです。形状は不整形。今回座った座席は上手側の2階席だったのだけど,全体やステージが不整形なだけでなく,なんだか傾いている感じ。座席の列に対して通路がナナメに設定されていることによる錯覚かもしれないけど,なんだか階段は歩きにくく,フラフラしてしまう。実際,みんなフラフラしてた。

響きは,どちらかというとデッドなホール。でも,バランスはいい。響きに包み込まれるような快感はないんだけど,オケの各楽器の動きが目に見えるように聴き取れる。もちろんオケの腕によるところもあるだろうけど。弦セクションがバランス良く響き,木管アンサンブルが綺麗に溶け合い,金管も心地よく寄り添う。ただ,最後列の打楽器の響きがちょっと分離しちゃうのが残念。

ただし,終演後に別の場所で聞いていた人に感想を聞くと,木管が埋もれていたらしいので,座席によって違うのかも。「座席によっては...」という昨日のおばちゃんの話を思い出し,おばちゃんが正しかったのかと納得。

演奏も素晴らしかった。特に前半。知らない曲だったけど,すーっと引き込まれる感じ。後半のブラームスもしっかりと構成された,緻密な演奏という印象。何より,常にティーレマンが主導権を握っている!という状況(ある種の恐さ)を常に感じさせる演奏でした。4楽章中間部のフルートでさえ,ティーレマンの左手と繋がった糸で操られているのかというくらい。もちろん良し悪しですが。



昨日の「Wiesnの暴走ジェットコースター」になぞらえて,敢えて乗り物に例えるなら,メルセデスかなんかの高級車という感じかな。もしくはICEの1等車とか。すごい運転をしても全くもって安定してるという感じとか,ちょっと手の届かない感じとか,ちょっと無機質な感じとか。

いい演奏だったし,満足なんだけど,どちらかというと昨日のバイエルン放送響の方が好き。なんでだろ?

昨日は石造りで良く響くホールのオケの表情まで見える場所で,今日は遠く離れていてなおかつデッドなホールで聴いたので,その違いかもしれない。昨日は隣が地元のおばちゃんでちょこっと喋って面白かったけど,今日の両隣はおっちゃんでまったく会話が無かったという無機質さもあるかもしれない。それともやっぱり,ティンパニストへのシンパシー?

いずれにせよ今は,ミュンヘンフィルはいいオケだし素敵だとは思うんだけど,バイエルン放送響の方が気になる存在。別にもう一度壊れかけのジェットコースターに乗りたいってわけじゃなくって,シェフであるヤンソンスが振るコンサートで彼らの本気を見てみたい。

2010-10-22

一人でコンサートウィーク<第1日>: バイエルン放送交響楽団/ヘラクレスザール

バイエルン放送交響楽団のコンサートを聴きに,王宮(レジデンツ/
Residentz)内にあるヘラクレスザールへ行ってきました。レジデンツにある,と言っても,バイエルン州立歌劇場と並んでレジデンツ博物館の入口がある南側ではなく,Hofgartenに面した北側にホールの入口があります。地図はこちら




10月の午後7時なので真っ暗なのに入口側は街灯も少ないし,本当にここにコンサートホールがあるのかどうか不安になるような景色です。

中に入ると,石造りの重厚なホールロビーがあり,ちゃんと明かりが灯っていたので安心。入口を入って左手にクロークカウンターがずらっと並び,その奥の階段を上るとホールのフロアです。

ホール内部も,かなり歴史を感じさせる石造りのホールです。縦長のシューボックス型。装飾はプロテスタント教会程度の簡素なものだけ。古代ギリシャ風(ヘラクレス?)の大きなタペストリーが掛かっています。

今回聴いたのは,ステージ上手横の2階席だったので,全体の響きはよく分かんなかったけど,けっこう独特な響きな印象でした。ワンワン響くわけでもないんだけど,しっかり響いている感じ。シンプルさが独特という印象。また,ステージは間口が狭いのでオケが縦長になり,ティンパニや金管にとってはアンサンブルしにくそうなステージです。実際,大変そうだった。

バイエルン"放送"交響楽団ですので,公演はテレビやラジオで中継されることも多いようです。ステージ上の天井からマイクがずらりと吊られています。ティンパニ,コントラバス,ハープのマイクだけはスタンドでした。

さて,演奏ですが,前半のバルトークはまずまずの好演。だけど,後半のベートーベン(5番)が大変だった。1楽章で,なかなか足並みが揃わず,ばたばたした演奏が続いていたけど,ついに展開部ではティンパニは飛び出すわ,コーダに入るところでファゴットは飛び出すわの事故だらけ。この先どうなるの!?という不安な演奏。

なんか妙な空気を引きずったまま,2楽章,3楽章もテンポに一貫性がなく,落ち着かない演奏。

たぶん滅多にないダメ公演だったと思います。でも,そんな中でも木管の音色だったり弦の響きだったりを聴かせたり,テンションをなんとかリカバリーしていく,オケの底力を見れて面白かったですが。

まあ底力を見せるとは言っても,既に残された時間は少なく,取り戻せるものは少ない。曲は運命。どうする!? ...

やっぱり超速で無理矢理テンションを上げてました。4楽章の提示部の2回目は,1回目より二目盛りくらいテンポ上がってました。指揮者もオケもあおりまくって,どんどん速くなる〜

石造りの古いホールの壁と,超高速で無理矢理演奏をまとめようとしているオケを見て,頭をよぎったのは「Wiesnの暴走ジェットコースター」 オクトーバーフェストの会場(バイエルン訛りでWiesn)なんかで出てきてる,ギシギシ音を立ててる古ーいジェットコースターのよう。実際,ネジが何本か飛び出しちゃってるわけだし...


最終的には,粗いんだけど,スリル満点でエキサイティング!という感想でした。大事故をやらかしたティンパニストの名誉のために補足しておくと,バルトークではペダリングの嵐の超絶技巧な箇所もあるんですが,好演でしたよ。飛び出しポイントはなんかよく分からんけど,指揮者もコンマスも確実にコントロールできていた感じではなく,その前から崩壊気味ではありました。まああの飛び出しは致命傷だけど。

終演後,ティンパニ奏者はみんなと一緒にステージを降りず,寂しそうにゆっくりとバチを片付けて(下の写真),他の奏者が居なくなったのを見計らってとぼとぼ帰って行きました。その気持,よーくわかります...




左隣のおばちゃんとは,英語とドイツ語まぜまぜでちょこちょこと話ました。近所に住んでいて,バイエルン放送響はよく聴きに来るそうです。
おばちゃん曰く
「ここはいいホールでしょう?ミュンヘンにはもうひとつガスタイクってのがあるでしょ?あそこのはダメよ。ホールの響きに問題ありすぎ。席によっては全然ダメ!」
スポーツの応援と同じように,自分のサポートするオケっていう感覚があるんでしょうね。
また,この街で100年前,200年前からこのような音楽の文化を育ててる歴史がそこかしこにあるというのも,改めて感慨深く感じました。何というか,オーケストラがあって,コンサートがあるのが当然で,連綿と歴史を重ねているんだという感じかな。

明日は,ガスタイクへミュンヘンフィルを聴きに行きます。